絨毯のパイル糸は、染めて色素を持たせた物と、染めずに生成りのままで使うものがあります。 染色の理由は様々ですが、染色する事によって色素が繊維に結びつき、保護の役割りもします。 インヂゴなど、染料の種類によっては防虫効果も期待できます。 しかし、何より重要なのは、絨毯に美しさ面白さの表現を与えていることです。
現在のペルシャ絨毯のパイル糸の染色には、草木染めなどの天然染料と化学染料の両方が使われています。 19世紀後半からイランでも徐々に化学染料が広まり、今では天然染料の割合は少なくなっています。
それぞれの染料の特色は、
化学染料の場合、比較的コストが安価です、比較的均一に染まり易く安定した色糸を供給できる。
不便な点として、繊細な色の表現が難しい、色の褪せ方が必ずしも美しくない、また一部の化学染料の場合簡単に褪せてしまうことがある、など。
一方天然染料の場合、現代に於いては手間と時間が掛かりコストが大きくなってしまう、天候などに左右され易く、染色職人の経験、勘に依り色にばらつきが出る、などの弱点があります。良い点は、色素が純粋でなく、多種の色素で構成されている為、色合いに独特の深味が出て、重ね染めや褪色の際にも豊な色の変化が期待できます。染色の理由からしてもこれはとても重要な事です。
また気持ちの問題ですが、天然の素材には優しさを感じ安心感を持つ事が出来ます。
シルクもウールも天然繊維ですから、時を経るとゆっくり色が飴色に変化していきます。 全体に良質の素材と草木染が使われている場合、染料の変褪色と相まって新しい物では表現できない見事な風合いが顕われます。 生成りの部分は深いベージュに、茜の鮮やかな赤も深みを加えた赤に...。 そのようなペルシャ絨毯には時代を経た物だけがもつ価値が加わります。
化学染料と天然染料の混合の場合、特に新興の産地では歳月を経た後の色合いの移行についての経験の蓄積が少ないため、 色のバランスが崩れてしまう事もあるようです。これでは時間が経ってもよい風合いの絨毯にはなりません。 そのため各産地ではそれぞれ研究、工夫がされているようです。工房によっては全てを天然染料に戻すなどの転換を計っているところもあります。
また、特にシルクに関して、ザンジャン、マラゲ等の産地で安く作られたものがクムシルクと称して出回っています。 すべてではありませんが、中には安く仕上げるため、染めなどの工程の一部が省かれたものもあり、 数年使用しているうちに色がにじんだり、早く褪せてしまうものもあります。 染めとは別の話しですが、シルクの質も高級品とは違います。 良質のペルシャ絨毯は洗いやメンテナンスをして長く使えるものですが、 このような品質の落ちる商品は安価な分、実用向け、使い捨てとお考えになった方が良いかもしれません。 (最近では経験の蓄積と市場の要求によって多少品質をあげて来ている産地もあります。判断を迷わせる元でもありますが、あえて付け加えます。)