ギャベ<Gabbeh>は、ペルシャ語でパイルを短く刈り込んでいない敷物を指す言葉です。 粗いを意味する言葉からの派生語の様です。 イラン南部のファース地方の遊牧民、カシュガイ族やルリ族の女性たちによって主に自分達で使う生活の道具としてつくられて来ました。 以前はあまりに素朴な物であったためイラン国内でも絨毯としての取引の対象とはならず、殆ど流通していませんでした。 染色されない羊毛の濃淡を使い分けてデザインされた物も作られ、オフホワイトからダークブラウンの色使いのプレーンギャッベは欧米でも一部のコレクターなどにしか知られていませんでした。

ギャッベのパイルはふかふかです。ギャッベのパイルはとても分厚いのです。一般的に15mm〜25mm程あります。他のペルシャ絨毯の場合、厚い物でも15mmくらいなものです。さらにパイル1本いっぽんの太さも太いのです。細かさを表現上の必要条件とする他のペルシャ絨毯の努力をどこ吹く風とばかりのおおらかさです。小さいギャッベをお求めになったお客さまが、何日か経って、次に大きめのサイズをお求めに見える事がしばしばあります。「今度は昼寝がしたいから...」と仰るのです。
イランのゾランヴァリ社<Zollanvari>はカシュガイ族と共に素材、染色、織り、仕上げと全ての工程での品質管理を進め、洗練されたギャッベのブランドを築きました。1980年代にドイツ、スイスなどヨーロッパで非常に評価され、その頃日本にも紹介され始めました。 ゾランヴァリギャッベの特徴は、素材、染色にこだわり、他のギャッベより比較的目が細かく、そのため柄も細かく、パイルもやや短めですっきりとした印象があります。

ゾランヴァリ社が広くギャッベを紹介して以降、カシュガイ族の女性たちは出荷用のギャッベを盛んに織るようになりました。 羊を牧し、毛を刈り、手で糸を紡ぐ。採取した草木で染め(最近では化学染料も平行して使用されることもあるようです?)、機を組み立て織る(ギャッベは水平機で織られます、これは移動を常とする遊牧民が、すぐにそして容易に組み立てられることが必要な為です。)・・・・・一族の遊牧生活の全てから素朴なギャッベは生まれます。カシュガイ族の素朴なギャッベの特徴は比較的粗く、厚く結ばれたパイルです。デザインは非対称や幾何学的、象徴的であったり、具象的な身近な動植物をモチーフにしたり、物語の場面の描写や景色のようであったりと様々です。もともと下絵も存在せず、思い浮かぶままに自由に織っていくと言われます。描かれる素朴な人物、動植物の図柄は、私たちにゆったりとした牧歌的な気分を味わせてくれます。 また毛足の長い所から、手触り、ふみ心地の良さも魅力です。
ギャッベが持ついろいろな面での優しさに加え、現代的なインテリアにも違和感なく使え、織り、柄の緻密さを求めない為に比較的安価であるなどギャッベは大変に人気があります。いま、トルコ、インド、中国及びエジプトなどではギャッベを似せた物が作られ安価に市場に出荷されています。羊毛の質、染め、織り、どれをとってもまだ本家イランのギャッベには及びません。ご購入の際には注意が必要です。 また、ゾランヴァリのギャッベを意識したものも作られています。これはカシュガイ族のものもイラン国内外の産地のものもありますが、あまりに意識し過ぎて緻密にし過ぎたり、パイルも短くカットし過ぎたものなど、もはやギャッベと言い難い物もあったりします。
多くのガシュガイ族のギャッベは、ほかのカシュガイ族の作る絨毯、キリムと同様に一大集積地であるシラーズに集められ、世界へ送り出されていきます。 そのため産地の表記はほとんどシラーズとなっています。

青森県、Yさまのお宅